パソコン、周辺機器でよく聞くハードディスクとは何か?これまで100台以上のハードディスクを扱ってきた筆者が分かりやすく解説します。
選び方についても解説します。
HDDとは?初心者のための基本解説
HDD(ハードディスクドライブ)は、パソコンやサーバーなどで使用される主要な記憶装置です。大容量のデータを長期間保存できる特徴があり、写真、動画、個人ファイルなど何でも格納します。
HDDの仕組みは、高速で回転する円盤状の磁気ディスクに、磁気ヘッドでデータを書き込んだり読み取ったりすることで動作します。この構造により、電源を切ってもデータが消えないメモリとして機能します。
HDDの容量は、ギガバイト(GB)からテラバイト(TB)まで幅広く、用途に応じて選択できます。ただし、機械的な部品を使用しているため、衝撃に弱いという特徴があります。
HDD製造メーカーは、Western Digital(ウエスタンデジタル)、Seagate Technology(シーゲート)、東芝の3社だけです。これらの企業は、長年の技術開発と品質管理により、信頼性の高い製品を提供しています。Western Digitalは「WD Blue」シリーズなどで知られ、Seagateは「BarraCuda」シリーズが人気です。東芝は「CANVIO」シリーズなどを展開しており、各メーカーが特徴ある製品ラインナップを揃えています。
これ以外のメーカーからも販売されていますが、中身のHDDはこの3社のOEMです。
HDDの仕組み:磁気ディスクとヘッドの働き
HDDは、「磁気ディスク装置」とも言います。「磁気ディスク」「ヘッド」という二つの部品の協力プレーで成り立っています。
磁気ディスクは、CDのような円盤状の部品で、データを記録する場所です。この円盤の表面には磁性体という特殊な物質が塗られており、磁力を使ってデータを保存します。磁気ディスクは高速で回転しており、その速さは1分間に5400回転や7200回転というものもあります。
ヘッドは、磁気ディスクの表面のすぐ近くを移動する小さな部品です。レコードプレーヤーの針のようなイメージですが、実際には磁気ディスクに触れることなく動きます。ヘッドの役割は、磁気ディスクにデータを書き込んだり、書き込まれたデータを読み取ったりすることです。
データの読み書きは、磁気ディスクが回転している間にヘッドが適切な位置に移動し、磁力の変化を利用して行われます。書き込む時はヘッドが磁力を発生させ、読み取る時は磁力の変化を検知します。
この磁気ディスクとヘッドの精密な動きによって、大量のデータを高速に扱うことができます。ただし、機械的な動きを伴うため、衝撃に弱いという特徴もあります。
HDDの容量:ギガバイトとテラバイトの違い
HDDの容量にはギガバイト、テラバイトなどの表記があります。
1ギガバイトで約1000枚の写真を保存できます(写真1枚1MBとする)
1テラバイト=1000ギガバイト
なので1テラバイトなら50~100万枚の写真を保存できます。
動画なら1テラバイトで約100時間程度を保存できます
注)写真や動画は保存品質によって大きく変わりますので上記は目安程度にしてください。
次のように換算します
1キロバイト=1000バイト
1メガバイト=1000キロバイト
1ギガバイト=1000メガバイト
1テラバイト=1000ギガバイト
HDDの速度:回転数と転送速度について
現在、一般に入手できるHDDの回転数は5400回転と7200回転です。
7200回転の方が高速に動作しますが、動作音と発熱がやや大きくなります。
動画編集をやるなら7200回転
写真や動画の保存だけなら5400回転
と考えておけば大丈夫です。
HDDとSSDの比較:メリットとデメリット
HDDのメリット:
- 大容量:比較的安価で大容量のストレージが得られます。
- コスト:容量あたりの価格が安く、予算を抑えられます。
- 長寿命:機械的な故障が無ければ10年以上使える。
HDDのデメリット:
- 速度:機械的な動作のため、読み書きが遅めです。
- 耐久性:衝撃に弱く、移動中の故障リスクがあります。
- 騒音:ディスクの回転音がします。
SSDのメリット:
- 高速:データの読み書きが非常に速く、起動やアプリの動作が快適です。
- 耐久性:衝撃に強く、持ち運びに適しています。
- 静音性:可動部がないため、動作音がありません。
SSDのデメリット:
- 容量:同じ予算でHDDより小容量になります。
- コスト:容量あたりの価格が高めです。
- 寿命:書き込み回数に制限があります(1~5年程度)
- 長期保存には向かない(5年程度で自然消失)
HDDの寿命:適切な使用方法と注意点
HDDは適切に使用すれば、通常3〜5年、長ければ10年以上使えることもあります。しかし、その寿命は使い方や環境によって大きく変わります。HDDを長く安全に使うための方法と注意点です。
適切な使用方法:
- 定期的なバックアップ: 重要なデータは別の場所にコピーしておきましょう。
- 丁寧な取り扱い: HDDは精密機器です。強い衝撃や振動を避けましょう。
- 適切な温度管理: 極端な高温や低温を避け、適度な温度(20〜30度程度)で使用しましょう。特に冷却ファンで常に風が当たっていることが大切。安いHDDケースは冷却が不十分なことが多い。
- 定期的なメンテナンス: ディスクの断片化解消やエラーチェックを行いましょう。
- 電源の安定供給: 突然の電源断を避け、安定した電源を供給しましょう。
注意点:
- 物理的な衝撃に弱い: 使用中の移動や落下に特に注意が必要です。
- 長期保管時の注意: 長期間使用しない場合は、乾燥した場所で保管しましょう。
- 異音や動作の遅さに注意: 異常な音や極端な遅さは故障の前兆かもしれません。
- データの重要性: HDDは突然故障する可能性があるため、重要なデータは必ずバックアップを。
寿命の兆候:
- 頻繁なフリーズや読み込みエラー(ツールでチェック)
- 異常な音(カチカチ、ギーギー音など)
これらの兆候が見られたら、データのバックアップを急ぎ、HDDの交換を検討しましょう。適切な使用と定期的なメンテナンスで、HDDの寿命を延ばし、大切なデータを守ることができます。
HDDのフォーマット:初期化の意味と方法
HDDのフォーマット(初期化)とは、ハードディスクを使用可能な状態に準備する作業です。これは新しいHDDを使い始める時や、古いデータを完全に消去したい時に行います。
フォーマット済の製品もあります、パソコンに詳しくない方はフォーマット済製品を購入することも手です。その際、WindowsとMacではフォーマットの種類が異なることがあるので製品の説明をよく読みましょう。
フォーマットの意味:
- データ構造の作成: HDDにファイルを保存するための基本的な構造を作ります。
- データの消去: HDDに保存されているデータを削除します。ただし、完全消去ではない場合もあります。
- 不良セクタのチェック: HDDの損傷した部分を見つけ、使用しないようにマークします。
フォーマットの方法:
- クイックフォーマット:
- 速い方法ですが、データの完全消去はされません。
- Windows:「このPCー対象ドライブを右クリックーフォーマット」を選択。
- 通常フォーマット:
- 時間はかかりますが、より完全にデータを消去し、不良セクタもチェックします。
- クイックフォーマットのチェックを外して実行します。
- ローレベルフォーマット:
- HDDの全セクタを書き換える最も徹底的な方法です。
- 通常はメーカーのユーティリティソフトを使用します。
注意点:
- フォーマットすると、HDDのデータは失われます。重要なデータは必ずバックアップを。
- OSがインストールされているドライブはOSから直接フォーマットできません。
- フォーマット後、ファイルシステム(NTFS、FAT32など)を選択する必要があります。
HDDのトラブルシューティング:よくある問題と対処法
HDDは重要なデータを保存する装置ですが、時に問題が発生することがあります。ここでは、よくある問題とその対処法を紹介します。
- 認識されない問題 原因:接続不良など 対処法:
- ケーブルの接続を確認し、必要に応じて再接続する
- 別のUSBポートやケーブルを試す
- 異音がする問題 原因:機械的な故障の可能性 対処法:
- 即座に使用を中止し、救出できるデータを別のHDDにバックアップする
- カチカチ音やガリガリ音は深刻な故障のサインなので、専門家に相談する。個人で治すのは不可能。
絶対に分解しない。HDDはクリーンルームで製造されており円盤が空気に触れた瞬間、破滅的な故障をします。
HDDの選び方:用途に応じた最適な選択
- 容量
- 一般的な文章やメールの保存:1〜2TB
- 大量の動画や写真保存:4TB〜6TB
- 8TB以上の製品もありますが、故障した時のリスクも大きく、あまりお勧めしない。
バックアップにも時間かかる。
8TB欲しいときは4TBを2個買うことをお勧めします。
- 回転数
- 7200rpm:高性能、動画編集やゲーム用
- 5400rpm:一般用途
- インターフェース
- SATA:パソコン内部の基盤に直接ケーブルを接続する(上級者向け)
- USB:外付けHDD用(一般的にはこっち)
- フォームファクター
- 3.5インチ:デスクトップPC用(大容量、安価)
- 2.5インチ:ノートPC、ポータブルHDD用
- 信頼性
- 24時間稼働させるなら必ず24時間稼働モデルを購入する。NASモデルなどとも呼ばれている。一般向け製品を24時間動かすと2,3年で故障する。
- 一般消費者向けモデル:家庭やオフィス用
- 静音性
- リビングルームやデスクの上に置いて使うなら5400rpmモデルを選択
便利なツール
HDDの健康状態をモニターするツール。
HDDに付属していればそのツールを使います。
フリーでオススメはcrystaldiskinfo。特に温度と不良セクターに注意する。

HDDを100台以上使ってきた注意点
これまでHDDを100台以上使用してきた筆者がHDDの注意点を教えます。
初めて外付けHDDを買う人は重要なのでよく読んでください。
使い始めの1週間~2週間は要らないデータを満杯になるまで入れて故障しないか確かめる。メーカーによっては初期不良が多いので、この作業は必ず行う。
いつもより遅いと感じたときは要注意。HDDは内部でリトライと言ってエラーを自動修復しようと試みます。運よく自動修復できても故障の兆候なので早めに交換する。
毎日使っているなら5年程度で交換する。
HDDは機械動作を伴っているのでいつか必ず故障します。上記のツールである程度予測はできますが、半数以上は突然故障して何も読めなくなります。バックアップは必ず取ってください。
本当に大事なデータはRAIDという装置を使います。RAIDについては別の記事で紹介したいと思います。
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